相馬とともに、近所のライブホールに来た中山教授。
![ライブホール](/excel-story-macro/images/image/03-01.jpg)
そこでは「TARGET BLANK」というバンドのリハーサル準備が行われていた。
バンドメンバーはまだ到着していない。
ホールの中ではPAのスタッフが慌ただしくライブの準備をしていた。
「おお!中山、久しぶりじゃないか」
「久々だな、三嶋。今夜はTARGET BLANKのライブが観れると聞いて楽しみでな」
「俺も楽しみなんだ。エリコちゃんたち・・・いや、TARGET BLANK、彼女らは今や押しも押されぬメジャーアーティストの仲間入りだからな。俺とお前の二人、彼女らのアマチュア時代からの頑張りを知っているだけに、感慨深いってもんだ」
![](/excel-story-macro/images/image/03-02.jpg)
このホールのオーナーの三嶋は、TARGET BLANKの無名時代からのファンだ。
彼女らが全国進出するきっかけをつくった人物でもあり、このライブホールは、TARGET BLANKのホームグラウンドでもある。
今でも不定期にTARGET BLANKのライブ企画を行っており、今日がちょうど3ヶ月ぶりのライブが行われるということだった。
「懐かしいぜ。元々5人ほどしかいなかったファンも、FMでヘビーローテーションされるやいなや、ホールに入れないほどのファンが押し寄せるようになった」
「ははは、良いことじゃないか」
中山は、このライブホールのオーナー「三嶋」と昔からの知り合いだった。
元々音楽好きだった中山は、このホールから巣立っていくバンドやアーティストの成長を見るのが楽しみで、フラリとホールを訪れることが多くあった。
「TARGET BLANK」も中山が応援していたバンドの一つだった。
「あ、あの・・・中山教授。そのTARGET BLANKっていうバンドに、何かヒントがあるんでしょうか・・・?」
中山にそう切り出したのは相馬だった。
![TARGET BLANKウェブサイト](/excel-story-macro/images/image/03-03.jpg)
「おっと、言い忘れてたね。実はこのバンドのボーカルの名前は、エリコというんだ」
「エリコ!?博士からのExcelシートに隠されていた名前ですね」
「そうなんだ。
私は以前、エリコと話したことがあってね。
彼女は幼い頃に父親と離ればなれになり、それ以来、母親と二人で生きてきたと言っていた。
あのシートの名前を見た瞬間、その記憶が蘇ったんだ」
「なるほど・・・。ですが、エリコという名前なら、全国にたくさんの女性がいると思います。その女性が博士の娘だという証拠は・・・?」
「私もエリコという名前だけで、大沢の娘だという推測をしたわけじゃない。実は、彼女たちが最近リリースしていた歌を思い出して、ピンときたんだ」
「・・・歌?」
「そうだ、実際に彼女の歌を聴いてみなさい」
「三嶋、TARGET BLANKの新曲って、今流せるかな?」
「ああ、大丈夫だ。今FMでヘビロテ中のあのバラードだよな」
「そうだ」
「ちょっと待ってくれよ。おっと、これだ、これだ」
![「私の心の中の関数」](/excel-story-macro/images/image/03-04.jpg)
マスターがCDを流し始めると、静かなピアノの音色と共に、透き通るようなボーカルの声がライブハウスに広がった。
![「私の心の中の関数」の歌詞](/excel-story-macro/images/image/03-05.jpg)
「これは・・・もしかして・・・Excelの関数の歌ですか?」
「ああ、そうみたいだ」
「どうして、Excelの関数を歌にしたんでしょう・・・?」
「そう、そこだ。
実は前に私がエリコと話した時、彼女はとても興味深いことを言っていた。
離ればなれになった父親との一番の思い出は、父親から定期的に教えてもらっていたExcelだそうだ」
「Excelを父親から教えてもらっていた・・・?」
「なんでも、彼女の父親はどこかで
Excelをよく使う仕事をしていたようで、
当時小学生だった彼女にゲーム感覚で教えていたそうだ」
「小学生の娘にですか・・・?」
「テレビも映画も観ない父親だったそうで、なんとか娘との接点を作ろうと一生懸命だったんだろうな。不器用な父親だったんだと思う」
「なんだか、大沢博士みたいですね・・・」
「そう、それだ。
彼女の言葉を思い出してみると、なんだか大沢のように思えてきてな。
そこでつながったのが、大沢から届いたExcelのシートだ」
「・・・あっ!・・・
それで、このバンドのボーカルが、博士の娘だと・・・」
「まあ、娘かどうかは、本人に聞いてみるのが一番早いだろう。
・・・ところでこの歌、一見ラブソングのように聞こえるだろ?
俺はこの歌が、彼女が自分の父親へ向けた歌にも聞こえてくるんだ。」
「自分の父親へ向けた歌・・・」
相馬の胸に「あなたとの想い出にフィルタをかける」という歌詞が響いていた。
その時、ライブハウスの入り口が開き、一人の女性が入ってきた。
「マスター、おはようございます!
電車がすごく混んでて、ちょっと遅れちゃいました」
「おお、奈々ちゃん、他のメンバーはまだ着いていないみたいだぜ」
マスターは、その女性と親しげに語っていた。
その女性は傍らに楽器を抱えていた。
どうやら、ヴァイオリンのようだ。
楽器を取り出し、何やら準備を始めたその女性の顔を見て、相馬は驚いた。
「・・・ま、真由美・・・!?」
![真由美に似た女性](/excel-story-macro/images/image/03-08.jpg)
「・・・えっ?」
ふいに声をかけられたその女性は、丸い瞳で相馬を見返した。
「・・・に、似てる」
「あれ?どなたか私に似たお知り合いの方がいらっしゃいましたか?
私、TARGET BLANKでヴァイオリンを弾いている、奈々って言います」
「・・・奈々・・・さん」
その時、入り口の方から突然、扉を開ける大きな音とともに男性が駆け込んできた。
「マ、マスター!!警察を呼んでくれ!!」
「ヒ、ヒデト!?どうしたんだ!?一体!?」
「エ、エリコが・・・!!エリコが変なやつらにさらわれた・・・!!」
![エリコがさらわれた](/excel-story-macro/images/image/03-09.jpg)
「えっ!!」
「な、なんだって!?
一体何が起きたって言うんだ!?」
「俺にも分からねえよ!!
黒服を着た変な男たちに急に囲まれて、あっという間の出来事だったんだ・・・!!」
「その車のナンバーは確認したか!?」
「い、いや、一瞬のことだったので、覚えてなくて・・・どうしよう!!」
「ヒデト!冷静になれ!
お、俺はとりあえず、警察に連絡する!」
「マスター、エリコが連れ去られた方向なら分かると思います」
突然、奈々はそう言うと、ポケットの中からUSBメモリを取り出した。
「エリコが連れ去られた場所は、多分、このUSBメモリの中のExcelシートに書かれているはず」
![USBメモリ](/excel-story-macro/images/image/03-10.jpg)
「え・・・?
奈々ちゃん・・・君は一体・・・?」
皆が驚いている中、奈々は落ち着いて言った。
「このUSBメモリはエリコ本人から預かっていたものなの。
このUSBメモリの中にはExcelのシートが入っている。
そして、そのシートの中に、エリコを探すための手がかりがあると思う」
「奈々ちゃん、この大変な時にふざけてちゃ駄目だよ!!」
三嶋は奈々を叱咤し、警察に電話をかけようとした。
「ううん、ふざけてなんかいないの。エリコはまだきっと大丈夫。
私にははっきりと分からないけど、それだけは言える。だからみんな安心して。
相馬さん」
「は、はい!」
奈々に突如声をかけられた相馬は慌てて返事をした。
「Excelの得意な相馬さんなら、このシートを解読できるわよね」
そう言うと、奈々は相馬にUSBメモリを手渡した。
「えっ・・・、ど、どうして僕の名前を・・・??
まだ名乗ってなかったのに・・・。
奈々・・・さん?あなたは一体・・・?」
「相馬さん、急いで!
私にはこのシートに何が書かれているか分からないの」
「わ・・・分かった!
とにかく、解読してみる!」
相馬には何が起きているのか全く分からなかった。
ただ、一つ言えるのは、エリコの身が危ないこと、そして、彼女を救う手がかりが奈々から託されたExcelのシートに隠されているらしい、ということだった。
「あ、エリコからの伝言があるわ。
『力を合わせれば、きっと地図は描ける』」
「で、伝言・・・?」
相馬はとにかく暗号を解いてみることにした。
全国のExcel使いに告ぐ! 奈々が相馬に託した暗号を解け!
奈々が相馬に託したExcelのシート。
その中には、エリコをさらった謎の組織が向かった「ある場所」が示されているらしい。
その「場所」とは一体どこなのだろうか?
施設名で答えてほしい!
この謎解きにチャレンジしていただけます。
謎解きにチャレンジされる方は、下記の「奈々から受け取ったファイルをダウンロードする」をクリックしていただき、ファイルをダウンロード後、ファイル解凍後のフォルダに同梱されている「あなたへ.xls」を開いて下さい。
暗号が解けた方は、下記の応募フォームから解答をお送りください。
期間中に応募された方の中から、抽選で3名の正解者様に、CD「私の心の中の関数/愛のウイルス対策」をプレゼントさせていただきます。
今回の謎の解答は、次回の「東京エクセル物語シーズン2 第4話」の本編で明らかになります。
全国のExcel使いの方々からのご応募お待ちしております!
「こ・・・この数字は!?」
「もしやこれは・・・あの数字じゃないのか?」
そう言った中山はPCに向かって、その数字を入力し始めた。
「あっ・・・!この場所は・・・!」
「これがエリコが連れ去られた場所ね。みんな、エリコを助けに行くわよ」
「奈々・・・ちゃん?」
奈々の顔には強い決意の表情が浮かんでいた。
「待っていて、エリコさん。私がきっと救い出すから」