これまでの謎への挑戦者1001人 すべての謎の解読者??人

第1話 博士からのメッセージ

♪ジングルベル ジングルベル 鈴が鳴る

東京タワーの下は
たくさんの人でごった返していた。
きらめくイルミネーションをバックに
写真を撮り合うカップル。

幸せが集まる空間。
そこには様々な笑顔があった。

・・・しかし、誰もが
これから起こることを知らなかった。

2012年12月21日 午前9時17分

風を切るような音が、空を切り裂いた。

「あ・・・」

誰もがその光景に言葉を発せずにいた。

東京タワーが消え去った後の東京タワー下

さっきまで「そこ」にあった「それ」は跡形も無く消え去っていた。

唖然とするカップル。

空を仰ぎ、泣き叫ぶ女性もいた。

それはありえない光景だった。

「くそっ・・・!遅かったか・・・」

やがて一人の男が東京タワーの下へ駆けつけてきた。

「ついにTW1が使われてしまった・・・!」

東京タワーは跡形も無く消え去っていた。


時は少し戻る。

2012年12月11日 午後3時17分

「くそ・・・傷がまだ痛む・・・か・・・」

そう呟きながら、シャワーを浴びる男性がいた。

彼の名は「相馬雄介」

米国のマーキュリー大学で時間学を専攻していた彼は、1ヶ月前から日本へ帰国していた。

ホテルの窓から見る東京の朝の風景

彼は汐留にあるホテルの一室にいた。
このホテルからは浜離宮恩賜庭園が一望できる。

「・・・博士・・・
あなたから受け取った思い・・・」

シャワーを浴び終えた彼は、
部屋の中央にある丸テーブルの上に置かれた
一通の封筒に目をやった。

丸テーブルに置かれた手紙

この封筒は、相馬の恩師、
大沢博士から受け取ったものだった。

大沢博士は相馬とともに
マーキュリー大学の研究所にて
時間学を研究し続けてきた一人だった。

封筒には血痕が残っていた。
その血は大沢博士のものだった。

博士はもうこの世にはいない。

博士が最後の力を振り絞り、相馬に託した一通の封筒。

『相馬君・・・この封筒を持って日本へ・・・』

相馬の脳裏に「あの日」のことが思い返される。


黒服の男達のシルエット

あの日、研究所に押し寄せてきた黒服の男達。

彼らは、博士や相馬たちが完成させた
「ある装置」を奪いにきた。

その装置の名は「TW1」。

博士と相馬たちは、時間学の研究からある技術を発明した。
その発明とは「タイムワープ」。
すなわち「時空移動」である。

素粒子の一種であるニュートリノの研究を続けてきた彼らは、
この世の時間の概念を大きく変えてしまう発見をしていた。

時間という枠を超え、
物質を過去や未来へ転送してしまうタイムワープ理論。

その発見は、やがて実用的なレベルに昇華され、
研究所のメンバーはやがて一つの装置を作り出す。
それが「TW1」という装置だった。

この装置を使えば、
物質を過去や未来に転送することが可能になる。
人類の進歩に新たな1ページが加わる。

しかし、使い方を誤れば、
恐ろしい兵器になってしまう。

その装置の存在は数名の研究メンバーだけに口止めされた。
彼らメンバー以外に、その装置の存在を知るものはいない・・・はずだった。

しかし、あの日、謎の男達はやって来た。

なぜ?
一体、どうやって装置の存在を知ったのか?

分からない。

ただ、一つ言えることは、
その黒服の男達は、その装置を人類の未来のために使おうと考えていなかった、ということだ。
彼らに渡すことを拒んだ博士は殺された。

そして、装置のプログラムを初期化しようとした研究所の仲間も・・・。


「痛つつ・・・」

相馬の右腕には包帯が巻かれていた。
研究所から逃げ出す際、右腕を撃たれていたのだ。

幸い弾がかすった程度の怪我だったが、黒服の男達は、相馬をも消そうとしている。

きっといずれはこの場所にも気付かれる。

そうなる前に、博士から託された思いを遂げなければならない。

USBメモリ

あの日、相馬は博士の機転により、
研究所から逃げ出すことができた。
博士は相馬に一通の封筒を託し、男達の気を引くため、自ら犠牲になった。

彼が託された封筒の中には、
小さなUSBメモリと
相馬への手紙が入っていた。

相馬君へ

君がこの手紙を読んでいるということは、おそらくワシはこの世にはもういない。
あの装置は人類にとっては大きな進歩を生み出すが、悪用されれば、人類を滅びさせかねない。
私はあの装置に緊急停止用の声紋認証を入力しておいた。
万一、あの装置が暴走しても、その声紋コードを入力すれば、装置は止まる。

しかし、その声紋認証をパスできるのは、この世に一人しかいない。
それは私の娘だ。

相馬君、私の娘を見つけて欲しい。
娘が小さい頃、私は妻と離婚した。
私には大人になった娘の居場所が分からない。

娘を探すのに協力してくれる人物の名を、そのUSBメモリの中に隠してある。
君宛のExcelシートを開けば、その中にその人物の名を隠してある。

その人物は私の同期で、研究チームの元メンバーだ。
18歳の頃からお互いを知っている。

彼と会えることを願っている。

-大沢隆-

PS:USEメモリの中にはExcelのシートがもう一つ入っている。
それは娘宛てのシートだ。
もし娘に会えたら、そのシートを渡して欲しい。

相馬は封筒を開き、中にあったUSBメモリをノートPCにつなげ、中身を確認した。

確かにシートは2つ入っている。

一つは相馬宛のシート、そしてもう一つは、博士の娘宛のシートだ。

相馬は日本へ帰国してから、自分宛のシートを何度も眺めていた。
しかし、博士がシートに埋め込んだ「暗号」は解読できずにいた。

「博士・・・僕にはあなたの暗号が分かりません・・・」

相馬は焦り始めていた。

悩んでいる時間が延びれば延びるほど、組織の手は相馬に迫る。
そして「TW1」が悪用されるのも時間の問題だった。

また、相馬は日本へ帰国した際、もう一つの目的を持っていた。

それは、元恋人「関本真由美」に会う、というものだった。

「関本真由美」

彼女は両親を早くに亡くした相馬にとって、
真由美は初めて心を許した相手だった。

相馬が研究に没頭し始めた頃から、
お互いのすれ違いが生まれ、
結局二人は別れてしまったが、
相馬の心の中にはまだ真由美の存在があった。

相馬は、真由美に組織の手が及ぶことを危惧していた。

「俺を追ってくるということは、俺の周りの人間も調べているはずだ。真由美が危ない・・・」

その真由美の居場所を、相馬はまだ見つけられずにいた。

博士の親友だけでなく、真由美も見つけられていない・・・。
相馬の焦りは募るばかりだった。


相馬はノートPCをバッグに入れ、ホテルを出た。

何かの手がかりが欲しかった。

本当はすぐにでも真由美を探したかった。
だが、組織が「TW1」を使うのを阻止しなければ、人類に未曾有の危機が訪れてしまう。

装置を作り出したメンバーの一人として、世界を守るために、装置を止めなければならない。

雄介の足は自然と、あるバーへ向かっていた。


バー

♪カランコロン

『いらっしゃいませ。・・・あ、相馬様。』

相馬がバーの扉を開くと、長身のマスターが迎えてくれた。

『今日は早い時間に起こしですね』

「はい、そうなんです。ちょっと煮詰まってしまって・・・」

『そうでしたか・・・。先程店を開けたばかりです。おかけください』

相馬はマスターに促されるまま、カウンターの席に座った。

『今日は何をお飲みになりますか?』

「ん-・・・マッカランで」

『承知いたしました』

相馬は分かっていた。
酒など飲んでいられないことを。

しかし、一人で悩み続けることで、思考が塞がれる危険も感じていた。

このバーは居心地が良い。
都会の喧噪の中にあって、落ち着いた雰囲気を出している。
相馬がこのバーに来たのは5度目だった。

『確か難しい研究をされているんでしたよね』

ボトルを探しているマスターが、相馬に声をかけた。

「はい、・・・あ、なぜそれを・・・?」

『以前、お名刺をいただきましたから』

「あ・・・。そうか酔っ払ってお渡ししたんでしたね」

『記憶が無いほど酔ってらっしゃったんですね。大事にしまってありますよ』

「はは・・・」

酔っていたとはいえ、自分の名刺を渡してしまったことを、相馬は後悔した。
この人にまで危険が及んでしまったら・・・。 そう思うと、心が痛んだ。

『あ、相馬様、誠に申し訳ございません・・・』

「あ、はい」

『マッカランをちょうど切らしておりました・・・。
もし宜しければ、別のものをお出しさせていただきますが、いかがでしょうか?』

「あ、では、マスターにお任せします」

『ありがとうございます。
ではせっかくですので、カクテルなどいかがでしょう?」

「カクテル、良いですね」

『ありがとうございます。それではおつくりさせていただきます。
ちょうどマッカランの風味に近い、ほのかにバニラの香りのするカクテルをおつくりさせていただきます』

「マスターすごいですね。
どんな条件でも、客に合わせたカクテルをつくってくれるんですね」

『いえいえ、それがバーテンの仕事ですから』

そう言って、マスターはカクテルを作り始めた。

「・・・あ!」

それは本当に突然だった。
相馬の頭に閃いたもの。
それは、相馬が忘れていたExcelの使い方だった。

「マスター!ちょっとノートPCを開かせてもらいますね」

『・・・?』

そう言うと、相馬はおもむろにノートPCを取り出し、
博士から受け取った自分宛のExcelシートを開いた。

「どんな条件でも客に合わせた・・・、どんな条件・・・」

相馬は自分のExcelの記憶を頼りに、クリックしていった。

「そして、次は博士からのこの手紙・・・!」

相馬はガッツポーズをした。

「解けた・・・!
これが・・・博士の親友の名前・・・」

一つ目の歯車が合わさった。

相馬は画面に大きく表示されたその人物の名前をノートにメモした。


相馬の前に、マスターがそっとカクテルを出した。

ブレイブ・ブル

『相馬様、どうぞ。
このカクテルの名前は「ブレイブ・ブル」と言います』

「ブレイブ・ブル・・・」

『ブレイブ・ブルの名前の由来は、
危険や困難に出会っても恐れない勇敢な人であれ、という意味です』

「勇敢・・・であれ・・・!」

物語は静かに、そして、確かに動き始めていた。

博士が相馬に託した暗号。
そこには、彼が訪ねるべき人物の名前が書かれていた。

あなたはその人物の名を導き出すことができるだろうか?

難易度: ★

この謎解きにチャレンジしていただけます。
謎解きにチャレンジされる方は、下記の「博士から受け取ったファイルをダウンロードする」をクリックしていただき、ファイルをダウンロード後、ファイル解凍後のフォルダに同梱されている「相馬君へ.xls」を開いて下さい。

そのファイルの中に博士からの暗号が隠されています。
その暗号を解読して下さい。

暗号が解けた方は、下記の解答応募フォームから解答をお送りください。
期間中に応募された正解者の方の中から、抽選で3名様に、CD「私の心の中の関数/愛のウイルス対策」をプレゼントさせていただきます。

正解は次回の「東京エクセル物語シーズン2 第2話」の本編で明らかになります。

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(今回の解答応募期間:2012年1月13日~2月13日)