これまでの謎への挑戦者1001人 すべての謎の解読者??人

第2話 アンダー・ザ・ノースリバー

「中山・・京一・・・」

ホテルに戻った相馬は、ノートPCを使い、ある人物を検索していた。

大沢博士が相馬に託したExcelのシート。
そこに隠されていた「中山京一」という名前。

彼は博士の大学時代からの同期で、大沢博士と一緒に研究を続けていた、元研究メンバーでもある。
相馬が研究所に入るよりずっと昔に、彼は研究所を去ったらしい。

あの日、相馬を除いた研究メンバーは全員、謎の組織の手によって殺された。
たった一人逃げ延びた相馬だったが、彼も銃による負傷を負っていた。

「痛つつ・・・」

まだ痛みの残る右腕で、ノートPCのキーボードを叩く相馬。
その手が止まった。

「見つけた・・・この人だ・・・」

情報数理学部 中山京一

彼の目には都内にある私立大学の教員紹介ページが映っていた。

「東京北沢大学・・・
情報数理学部 中山京一・・・」


2012年12月12日 午後2時37分

下北沢~
下北沢~

社内のアナウンスを聞いて、相馬は目を覚ました。

久々に乗った井の頭線。
座席に腰かけていた相馬は、ウトウトして、いつの間にか眠りに落ちていたらしい。

ドアが閉まる直前、慌てて電車から飛び降りた。

「下北沢で降りるのは久しぶりだな・・」

相馬は心の中でそう呟いた。

下北沢

改札を出た彼に、午後の眩しい日差しが降りかかる。

「この町、この風景、懐かしいな・・・。
真由美とよくデートしたっけ・・・」

下北沢。
大学時代、真由美とのデートの待ち合わせは、いつもこの町だった。

駅近くのヴィレッジヴァンガードでショッピングを楽しみ、カフェでお茶をし、日が暮れるまでたわいのない話をした。

「東京北沢大学」はこの町にあるらしい。
大学名は聞いたことが無かったが、最近、新設された大学のようだ。

東京北沢大学

「ここか・・・」

大学は駅から徒歩15分ほどの場所にあった。

「日本の大学のキャンパスって久しぶりだな・・・」

10年近くをアメリカのマーキュリー大学で過ごした相馬にとって、東京北沢大学のキャンパスは新鮮に思えた。

相馬は情報数理学部の案内図を見つけた。

「えーと・・・会議室2-Bは・・・と」


遡ること5時間前。

実は相馬は、中山教授と事前に電話で話していた。

『分かった・・・。
では、今日の午後3時、大学内の会議室2-Bに来てくれないか』

突然の話にも関わらず、中山教授は相馬と会うことを了承してくれた。

中山教授・・・。
大沢博士の元研究メンバー・・・。

彼は博士の研究のことをどこまで知っているのだろうか・・・。

相馬の中に疑問が広がっていた。
ただ、その疑問も、中山教授に合えば明らかになるだろう。

「この部屋か・・・」

会議室2-Bの文字を見つけた相馬は、部屋の中に足を踏み入れた。

『相馬君・・・だね・・・?』

そこには男が一人立っていた。

『よく来てくれた。
私が中山京一だ』


『そうか・・・そんなことが・・・』

相馬から事の一部始終を聞かされた中山は、愕然とした表情で前を見つめていた。

謎の組織によってマーキュリー大学の研究所が襲撃されたこと。
その襲撃によって、博士が命を奪われたこと。

そして・・・、博士は人類の未来を変える、大きな発明をしていたこと。

『相馬君は大沢の最後の希望というわけか・・・。
・・・実は私の元にも2ヶ月前に手紙が来ていたんだ』

「えっ!?」

中山はそう言うと、一通の封筒を取り出した。

中山へ

突然の手紙、申し訳ない。

君が研究所を抜けてから15年が経った。
当時の研究メンバーは、皆年をとったが、元気でいる。
君は日本で元気でやっているだろうか?

単刀直入でお願いがある。
封筒の中のUSBメモリを預かってくれないか?

そしてもし、君を訪ねる研究所のメンバーがいたら、そのUSBメモリを渡してほしい。

私たちは世界を変える「ある発明」をした。
その発明は、世界の物理概念を変え、多くの人の暮らしを豊かにするだろう。

しかし、どうやら、その発明を悪用しようとする輩がいるようだ。

この先、私は命を狙われるかもしれない。
もし、命を狙われようとも、この発明は守り抜くつもりだ。

ただ、私に万一のことがあった時は、その発明をこの世から消してほしい。

このUSBメモリの中に「ある暗号」を隠してある。
その暗号は、私たちの未来を救うための鍵の1つだ。

君だけが頼りだ。

生きてまた君と出会える日を願っている。
光り輝く未来を守ってくれ。

2012年10月9日 大沢隆

「大沢博士・・・」

『君から電話を受け取った時、この手紙が嘘じゃなかったことに気付いたよ。
大沢とは15年前にあるきっかけから喧嘩別れしてな・・・。
久々に連絡をよこしたかと思ったら、この手紙だ。
まさか、この手紙が現実になるとは・・・』

中山はそう言うと、言葉に詰まらせた。
天井を見つめるその目には、うっすらと涙が滲んでいた。

「大沢博士と喧嘩別れ・・・ですか・・・」

『そう・・・。今思えば子供みたいな喧嘩だったよ。
データ解析に使う関数に何を使うかで意見が割れてな。
お互いプライドが高かったから、私は研究所を飛び出してしまったんだ』

「大沢博士も頑固なところありますからね・・・」

『はは・・・。しかし、私は彼のことを尊敬していた。
素晴らしい科学者だった』

「博士も中山教授のことを信頼していたんだと思います。
だから、僕を今、この場所に向かわせたんですね」

『大沢・・・』

「あ、中山教授。
USBメモリ・・・見せていただけますか・・・?」

相馬は手紙に書かれていたUSBメモリについて尋ねた。

USBメモリ

『おっと・・・そうだった』

中山はスーツのポケットからUSBメモリを取り出し、相馬に手渡した。

『これが、大沢からの封筒に入っていたUSBメモリだ。
実は一度開いてみたんだが、不思議なシートが2つ入っていた』

「不思議な・・・シート・・・?」

『実際に開いて見てもらうと早いだろう、ノートPCは持っているかね?』

「はい。USBメモリを読み込んでみても宜しいですか?」

『勿論だ』

相馬はバッグからノートPCを取り出すと、USBメモリを読み込んでみた。


USBメモリの中には「中山へ」と書かれたエクセルファイルが一つ入っていた。

ファイルの中身

「これは・・・」

『ご覧の通り、シートは2つだ。

1つ目のシートは何かのメッセージのように見える。この模様が何を表しているのかは分からない。
そして、2つ目のシートには、IPアドレスのような数字がひたすら並んでいる』

「確かに不思議な数字ですね・・。
IPアドレスだとすると、0~255までの数字を4つずつ並べたものになるからおかしいですよね。
IPアドレス・・・じゃないのかもしれないですね」

『私もそう思う。
大沢のことだから、私たちに解ける暗号にしているはずだが、恥ずかしながら、私には分からなかった」

「僕も博士からの暗号には悩まされました・・・」

『君の暗号の時は、手紙にヒントがあったそうだね』

「・・・はい」

『この手紙に何かヒントがあるのかもしれん・・・』

「・・・」

『・・・』

「あれ・・・もしかして・・・」

相馬はそう呟くと、おもむろにシートを触り始めた。

「シートが2つに分けられている理由・・・。
こういうことだったんですね」

相馬の画面にはある3文字が表示されていた。

全国のExcel使いに告ぐ! 博士からの暗号を解け!

博士が中山教授に託した暗号。
そこには、博士からの3文字の暗号が隠されていた。

あなたはその「3文字」を導き出すことができるだろうか?

難易度: ★★

この謎解きにチャレンジしていただけます。
謎解きにチャレンジされる方は、下記の「博士から受け取ったファイルをダウンロードする」をクリックしていただき、ファイルをダウンロード後、ファイル解凍後のフォルダに同梱されている「中山へ.xls」を開いて下さい。

暗号が解けた方は、下記の応募フォームから解答をお送りください。
期間中に応募された方の中から、抽選で3名の正解者様に、CD「私の心の中の関数/愛のウイルス対策」をプレゼントさせていただきます。

今回の謎の解答は、次回の「東京エクセル物語シーズン2 第3話」の本編で明らかになります。
全国のExcel使いの方々からのご応募お待ちしております!

博士から受け取ったファイルをダウンロードする

解答応募フォームへ
(今回の解答応募期間:2012年3月1日~4月1日)


『これは・・・』

「大沢博士の・・・娘さんの名前ではないでしょうか?」

『なるほど・・・自分の娘の名前をシートに隠していたのか・・・
・・・ん?』

「中山教授、どうかされましたか?」

『その名前・・・どこかで・・・』

「・・・えっ?」

『もしや、彼女が・・・大沢の娘・・・!?』

「中山教授!この名前の子をご存じなんですか!?」

『ああ・・・おそらく。

・・・相馬君、出発する準備をしたまえ、彼女に会いに行く』


その頃、都内のFM番組であるアーティストの楽曲が紹介されていた。

「さあ、今週のヘビーローテーションナンバーをお届けします。
TARGET BLANKで"私の心の中の関数"!」

運命は偶然ではなく必然。
マクロな静寂はいつか打ち破られる。

中山教授と相馬は、大学のキャンパスを後にした。


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第1話当選者発表 第1話の謎の正解者は370名中367名で、正答率は99%でした。賞品に当選された方は以下の通りです。カメスケさん、NaoMiさん、ひこ@紫のバラの人似さん 上記の方には追ってご連絡差し上げます。たくさんのご応募誠にありがとうございました!